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乳と卵−性がつなぐ未来に何があるのだろうか?

 受精卵となったとき、性染色体はXXXYのいずれかに決定される。生物学的に女もしくは男としての「生」がスタートする。女の子の場合、お母さんのお腹の中にいるとき、原始卵胞の数が700万個もあり、それがおぎゃあと生まれるときまでに100万個まで減ってくるという。その後も思春期に10万個、アラフォーで1万個という具合にどんどん減り続けていく。生理1回で1000個の原始卵胞が減少していくという計算らしい。50歳前後で閉経する。つまり、卵巣の中の卵胞が消失し、永久に月経がストップする。

 川上未映子「乳と卵」に出てくる3人の女性。姉の巻子とその娘、緑子とわたし。終始、わたしの脳が語り続ける。この小説家に新海誠が魅かれた訳がわかるような気がする。

 場末のスナックでホステスとして働くシングルマザーの巻子。声を出さず、筆談でしか返事をしない緑子。「お母さんが心配だけど、お母さんみたいになりたくない」でも、お母さんを助けたい。でも、こわい、くるしい、生まれてこやんかったら、よかったんとちやうんか・・・。

 女は卵子をつくるために生まれ、ひたすら受精を待ち、子供を産み、育てるためにお乳を出すしかないのか。太古からそういうふうに定められてきた。そんな「不条理」を受け容れられない娘の緑子は気が付くと自分も女だった、それが嫌で嫌でたまらない。40歳にして驚くほど痩せ衰え、cachexicでさえある母親は「がん」であることを暗示している。それなのに豊胸手術を受けたいという。男?いや、そうではない。「お母さん、ほんまのことゆうてや」、緑子は絞り出すような声で云う。母親は云えない。豊胸は女としての願いだが、口実に過ぎず、娘を実の父親に託しに来たのだろう。でも口には出せない。二人は泣きながら卵を自分の頭にぶつけ割り続ける。何個も何個も。周囲は割れた卵の黄身、白身、殻で惨憺たる状況。「わたし」は黙ってそれを見ている。消費期限切れ寸前の鶏卵は無精卵。貧しく、生きていくのがやっとの3人。ミトコンドリアは同じ。

 これからも、昨日までの人生を引き継いで生きていく(つもり)。でも、巻子が「がん」で亡くなったあと、緑子はどうなるのだろう。学校でのいじめはどうするのだろう。誰も助けてくれない。登校拒否。中卒で水商売に入り、お母さんと同じシングルマザーの道を辿るのだろうか。「わたし」も閉経が近い。新しい仕事は水商売だろう。社会では3人とも弱者でその存在を否定されている。崖っぷちの「人生」を生きている。「なんのために・・・生まれてきたの?」

 

 男も同じだ。なんのために「生」があるのか。「性」のため、女を受精させるため?女の乳房で興奮するようにできている。男根主義などという言葉で誤魔化す必要もない。扁桃体をノックアウトしたサルは、食欲と性欲しかなくなるという。ひたすら食べて、セックスする。東大でも慶應でも、男子学生が集団で女性を襲って何食わぬ顔をして日常生活を送っている。いや、学生だけに限らない。すべての世代で地位も名誉も関係なく、男も女も盛りのついた猫のように異性を求めて猛り狂っている。男性ホルモン(女性ホルモンも男性ホルモンからつくられる)とドーパミンに支配された社会。こんな世の中に生まれた子供たちはみんな、緑子のように「生まれこやんかったらよかった」とつぶやいているかも知れない。それは昔のように単なる思春期のメランコリイではなく、「生」と「性」が露骨にゆがめられ、誰しもが明日は電車に飛び込むか、殺されるか、わからない不条理が支配する社会の中にいることに感ずいている。少子化はそうした時代の空気を反映した結果だ。

 オランダでは、20代の女性が安楽死した。幼少期にレイプされ、トラウマとなって苦しみ続けてきた。両親も医者もその苦しみを癒すことができなかった。(Netherlands Sex Abuse Victim With ‘Incurable’ PTSD Allowed To Die By Euthanasia)ベルギーでは安楽死に年齢制限がない。10代の女性が安楽死した。ベルギーのパラリンピアンで金・銀メダリストMarieke Vervoort37歳)は来年の安楽死を公言している。カリフォルニアではALSで苦しんでいる41歳の女性が安楽死を選択し、お別れのパーティを開いた。

 日本でも安楽死の法制化が検討されている。群馬大学腹腔鏡手術殺人事件、相模原障害者殺人事件、大口病院連続殺人事件と、時代は優生思想に傾いている。安楽死法は悪用・濫用されるだろう。だが、この時代の流れはいかんともしがたい。


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  • 2017.09.02 Saturday
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