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Brexitの流れは世界に波及する

 英国民の過半数はEU離脱を選択した。これを受けて、日経平均株価は128633銭(7.9%)安の1万4952円2銭、今年最安値となり、ドル・円相場は一時1ドル=99円2銭と1311月以来の100円割れまで円高が加速した。世界各国の株価も下がっている。英国通貨ポンドも大きく値を下げ、とくに対円では10%以上下落している。

メディアは「予想外」と報じているが、ある程度予想されていた結果だと思う。ところが、どういうわけか、国民投票前日の22日から残留派有利との「うわさ」が流れ、株価もポンドも値上がりした。ブックメイカーの賭け率も「IN」が「OUT」を大きく上回った。1815年のワーテルローの戦いで英国国債を売り、投資家の投げ売りを誘ったネイサン・ロスチャイルドの策略が思い浮かぶ。英蘭プロイセン連合国軍がナポレオン率いるフランスに負けたという憶測を呼び、代理人を使った、ロスチャイルドの大量買いを可能にした。大暴落後の大暴騰で巨万の富を得たロスチャイルドはイングランド銀行をはじめとする欧州各国の金融当局を支配することになったという有名な実話である。

 日銀もイングランド銀行も為替市場に(協調)介入したと推測される。日本の厚労省管轄のGPIF資金も大量に投入され、株価を買い支えたことだろう。国民の年金資産を大幅に目減りさせることになった。これを奇貨として儲けた相手はヘッヂファンドだろう。Putオプション/空売りを仕掛け、世界の株式・為替市場でぼろ儲けしたはずだ。

 各国首脳やメディアの表向き発言とは異なり、英国離脱派の勝利はある程度約束されていた。なぜか?歴史を振り返ればわかる。

英国は1973年、ECEUの前身)に加盟した。このときの加盟国は9か国。第二次世界大戦後、ヨーロッパにおける不戦の誓いがテーマだった。それが東ヨーロッパ諸国をどんどん取り込むと同時に、経済連携から政治的統一政府の樹立という深化に及び、民主主義信奉者たちが疑義を唱え出した。民主主義は選挙民の意思を反映する制度である。ところが、EU政府は各国首脳の談合で選ばれた仲間内で運営されている。残留派のガーディアン紙の記事によれば、(the EU and Brussels officials as a hotbed of unaccountable political elites who were not democratically voted by the British peopleEU政府や役人は直接選挙の洗礼を受けることもなく、政治的な説明責任を果たすわけでもないにもかかわらず、(the unelected European commission proposes laws that end up passed by the parliament)そうしたヨーロッパの役人らが自分たちの都合のいいようにルールをつくり、結果として各国議会が承認せざるをえなくなる、これでは民主主義が約束する住民自治が完遂できないという反EU覇権主義が英国内に充満していった。20105月、キャメロン内閣発足時、保守党と自民党の連立を組むため、トーリー派を取り込んだことで、EU懐疑派の発言力が増し、EU離脱の是非を問う国民投票実施の声を抑え込むことに苦労することになった。201110月には81名もの保守党議員が国民投票実施賛成派に回り、2012年には「Brexit」という造語がつくられた。2014年、欧州議会選挙で、英国に割り当てられた73の議席中、EU脱退を主張するUKIP(英国独立党)が21議席を獲得して第1党となった。そうした声に押され、キャメロン首相は20155月の総選挙のプレッジで、保守党単一政権が成就した暁には2017年末までに国民投票を実施すると公約せざるを得なくなった。それが今回の国民投票に至った経緯だ。英国民はこの流れを肌で感じてだろう。スコットランドや北アイルランドを除けば、離脱派が圧勝していたはずだ。ロンドンなど首都圏はボヘミアン的なコスモポリタンの巣窟では郷土愛などはない。だから、テロも頻繁に起こる。

 テレビのニュースを見ていたら、ある解説者がわけ知り顔で「英国民は“感情”で決断した」と述べていた。ヨーロッパに駐在する日本人はロンドンやパリという大都会で情報収集を行うが、それでは実情はわからない。急増する移民問題が失業のリスクを生み、外国人排斥思想につながったという見方は問題を矮小化しすぎている。ましてや、EU離脱が英国人の偏狭ナショナリズム=「エゴイズム」だと批判する人々はEU懐疑派の歴史を知らない。実際は、投票前、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが指摘したように、「離脱後混乱が起きるだろうが、長い目で見れば離脱した方がいい」という民主主義の根幹にかかわる選択だった。国民の生活を守るために国家はあるはずだ。国民の代表者に法律というルールをつくらせる。そのルールは選挙民の福祉を増進するものでなければならない。自分たちが選んでもいないブリュッセルの役人たちが仲間内で勝手につくったルールで動けと命令されても、その結果責任は誰が負うのだ?国として最大多数の最大幸福は実現できない。しかも、その役人たちは庶民に貢がせ、左団扇の高給取りとなっている。(どこかの国でも同じ構図がある。)

 英国以外のEU加盟国にも動揺が走っているという。フランス、イタリア、スペイン、オランダでEU懐疑派がモーメンタムを得ている。それらの国々でも離脱の動きが活発化するだろう。「EUでは解決できない」とそれらの国々の選挙民の大半が不満を抱えているからだ。アメリカでも、ドナルド・トランプがメキシコからの不法移民流入阻止を叫んでいる。アメリカでは、アフガニスタンからの移民が銃乱射事件を起こしたばかりだ。排外主義が保守派を取り込んでいる。

 移民の発生源は北アフリカ、中東、東欧である。これらに共通している歴史がある。独裁政権が西欧社会から攻撃され、内乱が起き、傀儡政権が樹立されるも、今だに砲弾が飛び交い、住民が安心して住めなくなった地域であるということだ。とくに、中東では、「中東の春」以来、先祖代々の土地や建物が破壊され、安全に住めなくなった住民たちは死を賭して脱出する以外に生き延びるチャンスがなくなった。その先にあるEU諸国に向かうほかない。この破壊の連鎖がテロリズムを生み、移民を生んだ。その元凶は英米仏であるが、その背後には巨大コングリマリットの存在がある。各国の利権を恣にしようとする巨大企業が英米仏政府=軍事産業を動かし、「大量破壊兵器の存在」などという虚偽の理屈をつけて独裁政権を倒そうとした結果、それらの国々の住民たちはエクソダスに向かうほか生きる残る手段がなくなったのだ。しかも、英米仏はその後始末として移民の受け入れと資金負担を「国際協調・貢献」という美名のもとに他国にも要求している。もちろん日本にもだ。

 これらの国々のリーダーたちが行った誤った政策のつけが回りまわって各国の庶民に押し付けられている。英国民はこの矛盾に気付いたのである。グローバリゼーションという美名の下に、何から何までユーロ・スタンダードを押し付けられ、低賃金で働かされた挙句、域内の低賃金国からの生産物に置き換わられ、失業する。庶民の暮らしぶりは苦しく、将来の不安も大きくなるばかりなのに、一部のエリートは庶民の何百倍、何千倍の所得を得ている。その多くが、ただ、カネを動かすだけの金融業界あるいはIT業界である。トップマネジメントも一般社員の50100倍もの報酬を得ている。おかしなM&Aで莫大な損失を被っても、その意思決定者たちはゴルフに現を抜かし、別部門の社員がリストラされる。そうした役員たちに高額報酬に見合う能力=価値があるのだろうか?不祥事を起こして会見する、三菱自動車や東芝などの経営トップにそれだけの力量があるとは思えない。

 今回のEU離脱は、世界中でパラダイム・シフトを引き起こす契機となるだろう。英国人はキャメロン首相のウソを見抜くことができた。それはサッチャーリズムに対する訣別を意味する。外国から投資を引き込み、英国経済を活性化させる。新自由主義の旗印の下に、ビッグバンなど規制緩和、自由経済を推し進めた。しかし、その結果は?庶民の暮らしは良くなっただろうか?自由主義経済というレトリックとは裏腹に、現実は独占・寡占が進んでいる。巨大化した企業だけが生き残り、庶民は奴隷のように下働きさせられるだけ。それが嫌なら、辞めて結構。低賃金の移民にやらせる。しかし、その移民たちも定住するうちに低賃金に甘んじていられなくなる。家族が増え、支出が増えるからだ。だが、高等教育が受けられない。社会に不満をもち、テロに走るという悪循環。サッチャーリズムの勝ち組はそんなことは知っちゃいない。負け組は能力がないんだから仕方がないと無視する。その一方で、グローバリゼーションの果実を恣にする巨大企業は競争を回避するために、政府を取り込み、EUを取り込み、庶民を奴隷化する。グローバリゼーション=サッチャーリズムの恩恵を受ける側の人々はEU残留を望んだ。しかし、そうした人々は少数派で、大半の英国民にとってEUの果実は「ことばだけ」の幻影に過ぎなかったということだ。それに気付けた理由は、真実を伝えるジャーナリズムの存在と英国民の知性による。日本国民にもそのウソが見破れるだろうか?TPPが間近に迫っている。


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  • 2017.09.02 Saturday
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  • 03:32
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コメント
この議論の方向には違和感を感じる。
本来、域内自由往来と民主主義には矛盾がある。なぜなら、A国の国民がB国でほぼ一生を過ごすことを選択してもA国の国民にB国の参政権が自動的に与えられることはない。となるとこの「A国からB国に移動した国民」は事実上、民主主義から排除される。ここで勝手に移動してきたのだから不条理は我慢しろ、というわけには行かない。各国の民主的に選ばれた政府の「上」に官僚機構がある仕組みは、このような「域内移動による民主主義からのはじき出し」を緩和するための仕組みである。これを元々そこに住んでいた住民の観点だけから議論して「民主主義の制限」とだけ論じるのはアンバランスであろう。移動してきた国民の人権にも配慮したバランスのとれた議論が必要だろう。そこに問題があるのは最初からわかっている。「後ろ」に戻るのではなく、「前」に進んで各国の政府の「上」に民主的な制度を作るのが将来的に暗黙の了解だっただろう。現在のブリュッセルの民主的な選挙を経ない官僚機構はその意味で過渡的な必要悪に過ぎない。このような議論で後ろに戻ることを正当化するのは本末転倒ではなかろうか。
  • 田口善弘
  • 2016/06/25 2:56 PM
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