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ソチ五輪閉幕。ありがとう、浅田真央!

 ソチ五輪が閉幕した。オリンピックのシンボル、5つの輪が4つになってしまった開会式のトラブルを再現した後、5つ目の輪を点火するという「しゃれっ気」たっぷりのリラックスした閉会式だったらしい。
 メダル数は、開催国ロシアが33個(うち金13)で首位。前回のヴァンクーヴァー、15個(うち金3)やトリノの22個(うち金8)を大きく上回る。2位はアメリカの28個(うち金9)。アメリカのメダル数は前回、37個(うち金9)、前々回の25個(うち金9)と比べパッとしなかった。グローバリゼーションの影響だろう。3位、4位、5位は、それぞれ、ノルウェーノ26個(うち金11)、カナダ25個(うち金10)、オランダ24個(うち金)と常連が並んだ。アジア勢では、11位に中国9個(うち金3)がくるが、これは前回の11個(うち金5)や前々回の11個(うち金2)より劣る。12位に韓国8個(うち金3)が来るが、前回14個(うち金6)や前々回の11個(うち金6)と比べ、大きく減らしている。
 さて、日本のメダル獲得数は17位で、8個(金1)、前回の5個(金1)や前々回の1個(金1)に比べれば改善されているが、スキー・スケート人口が韓国より多い国としては、寂しい結果にはちがいない。というのは、新種目が追加されたため、メダルの総数は前回(ヴァンクーヴァー)より40個、前々回(トリノ)より50個も増えているからだ。しかも、ロシアへ帰化したショートトラックの韓国人ヴィクトール・アンが韓国代表となっていたら、金メダル3個、銅メダル1個が韓国に追加される。日本とのギャップは大きい。メダル獲得数トップのロシアについても、アメリカからロシアへ帰化したスノボー・スラロームのワイルドがとった金メダル2個が含まれている。この二人の国籍変更がなかったとしたら、ロシアはメダル獲得数でトップには立てなかった。
 冬の五輪競技は北欧が強いのが当たり前。雪や氷に囲まれた環境で、遊びがスポーツに発展したからだ。ホイジンガやカイヨワを持ち出すまでもなく、ホモ・ルーデンスとしてヒトは遊びの中で生き方を学ぶ。スキーやスケートはヨーロッパで発達し、アメリカでエクストリーム化した。それとともに、ビジネス化してきた。道具に凝り始め、サーカス化した。そして、1000分の1秒を競うようになった。と同時に、ナショナリズムも台頭してきた。
 スキー・ジャンプやノルディック複合で日本勢がトップを独占した時代があった。これにIOCがいちゃもんをつけた。スキー・ジャンプでは身長の低い日本勢に不利になるようなルール改定がいくつも行われ、やがて日本勢は勝てなくなった。ノルディック複合でも、距離の弱い日本を貶めるように、点数の上で距離のウエイトを大幅に引き上げるルール改定が実施された結果、日本はさっぱり勝てなくなった。女子スキー・ジャンプの高梨沙羅選手についても、小柄な彼女が大きく飛距離を伸ばすことに疑義が集まった。不正行為が行われているはずだというクレームだった。そこで、スキー板の変更や、ウエアの変更が強制された。要するに、スキー板を身長に合わせると同時にウエアも体型に密着させ、「不正な」浮力を排除せよということだった。それでも高梨選手はトップの位置で競い続け、ソチ五輪で金メダルを狙った。4位と残念な結果に終わったが、もし、高梨選手が金メダルを獲得したら、更なるルール変更が待っていただろう。(夏の五輪水泳でも平泳ぎの田口選手が泳法違反で失格とされたことを思い出す。新ルール適用で田口選手を排除したあと、なんとIOCは元のルールに戻したのだった。)
 日本で唯一の金メダルを獲得したのは男子フィギュア・シングルの羽生結弦選手。19歳と69日で偉業達成となったが、1948年サンモリッツ大会を制したディック・バトン(アメリカ)の18歳と202日という、五輪の男子最年少金メダル記録には及ばず、史上2人目の10代の金メダリストとなった。
 さて、ソチ五輪フィギュアSPの浅田真央の演技で思い出すのは、このディック・バトン(Richard Totten "Dick" Button)とペギー・ゲイル・フレミング(Peggy Gale Fleming)がコメンテイターとして解説した2008年世界選手権フリーの模様だ。イエーテボリ(スウェーデン)からESPNABC)が放映した。
Mao Asada - 2008 Worlds FS (ESPN)
http://www.youtube.com/watch?v=4ZNMPDVJjs8
 ペギー・フレミングが浅田真央のトリプルアクセルに言及し、世界に二人といないジャンパーだと称賛したとき、「事件」は起こった。ディック・バトンが「awful, awful, awful・・・」と叫んだ。まさに「あってはならないこと」を目の当たりにしたのだ。軸足のブレイドに乗って進行方向に滑っていくとき、体重が後方に残ってしまったためにひっくり返ったのだ。ディックが厳しく戒めている。だが、大失敗の直後、浅田真央はトリプル・フリップ―トリプル・トウループを成功させ、2回目のトリプル・トリプルもアンダーローテーションにはなったが、飛んでいる。ペギーは浅田真央の繊細・華麗でエレガントな動き、飛びあがってから体が回転するという「遅れ」の優美さを指摘する。そして、二人とも、演技冒頭の大失敗をものともせず、それ以降の演技をほぼ完璧にこなした浅田真央をmagnificentと絶賛した。これこそ、「本当のチャンピオン」だと。ロリイ・ニコルのコレオグラフィもショパンも衣装もすべてがマッチした最高のプログラムだった。3Aがなくとも十分にやっていけたことを実証している。
 この2008年世界選手権のフリーの模様はABC以外、ユーチューブに2つアップされている。
Mao Asada - 2008 Worlds LP (CBC )
http://www.youtube.com/watch?v=iOwrOxjLRGE
 
Mao Asada 2008 World FS (English)
http://www.youtube.com/watch?v=NK9RTH_iNW0
 
 解説者が息をのみ、転倒した真央が壁に激突しないかと心配している。「トレーシー、息し始めている?」と冗談交じりのコメントを挟みながら、「これを見ている子供たちのみなさん、この映像を録画して、勉強してほしい。フィギュアとはこうあるべきという手本を浅田真央が示している。失敗しても挫けず、最後まで演じ切ること・・・」おそらく、このときコメンテイターの目には涙が浮かんでいる。それほど、浅田真央と観客とコメンテイターが一体となった特別な瞬間だった。
 浅田真央の演技がとくに世界の注目を浴びたのは、ヘルシンキで開催された2004年世界フィギュアのジュニア選手権においてだった。
Mao ASADA 2004 Jr.GPF SP in Helsinki
http://www.youtube.com/watch?v=0tQ38Mz6QyI
 
Mao ASADA Jr. GPF 2004 in HELSINKI FS LP
http://www.youtube.com/watch?v=SGTM6pVq8Nc
 
 コメンテイターがphenomenal(とてつもない)と連発する天才、浅田真央は、女子ジュニアで世界初となる3A を飛び歴史を創った。(伊藤みどりにしても)トニヤ・ハーディングにしても、3A を飛ぶには男性並みの筋力が不可欠なのに、細く小さな体で軽々と飛ぶ浅田真央。奇蹟を目の当たりにして、驚愕するコメンテイターの声が上ずっている。トリノ五輪に浅田真央が出場していれば、間違いなく金が取れた。当時、ABC15歳で金メダル(長野五輪)をとったタラ・リピンスキ(Tara Lipinski)と比較して、浅田真央を救済すべきだという声を伝えている。(このルールは1996年から適用されている。)
Mao Asda on ABC News
http://www.youtube.com/watch?v=vjARDCovgA4
 
 浅田真央以外にチャレンジしない女子の3A に対して、国際フィギュアスケート連盟は低いポイントしか与えていない。だが、彼女が引退し、西欧から3Aジャンパーが出るようになれば、ポイントが引き上げられる可能性は大である。

 ソチ五輪、フィギュア女子シングルの優勝者はアデリナ・ソトニコワ(ロシア)、2位が金妍兒=キム・ヨナ、3位がカロリーナ・コストナー(イタリア)という結果だった。この順位に納得する人はいないだろう。ロシア選手のスコアがインフレを起こしているとアメリカのメディアはやかましい。韓国でも、長野五輪のとき不正を働いたウクライナ人とロシア・フィギュアスケート連盟役員の妻が審判団に加わった結果、ソトニコワのGOEに満点近い得点が加算されているとクレームがつけられている。
Pj Kwong も「Ladies' free program gave me my 'Olympic moment'
Mao Asada, Caroline Kostner provide memorable experiences」という記事の中で、「I think that the right ladies finished on the podium, although I would have had them in a different order.」(受賞者たちの順位には問題あり)と指摘している。
 
 この記事の中で、浅田真央については、「What caught me, though, were Asada’s tears when she finished her skate. Call it relief, call it joy or a combination of each, but that spontaneous expression of emotion illuminated the courage it must have taken for her to skate like she did knowing there was no chance of a medal. The good news is she moved up to sixth place overall.」(浅田真央が演技の最後に流した涙はなんだったのだろうか。安堵感なのか、歓びなのか、両方ともか、いずれにしろ、自然とあふれ出た感情表現こそ、メダルの可能性がまったくないということがわかっているにもかかわらず、フリーを最後まで滑り続けることにこだわった彼女の勇気がほとばしり出たものだった。それが私の心を打った。)海外のファンの中には浅田真央がフリーを棄権するのではないかと思った人もいたようだ。クワンはredemptionという言葉で言い表した。なんとか少しでも挽回したい、感謝の気持ちを伝えたい、これが浅田真央、渾身の演技につながった。
 
 メダルの色について、クワンは、たしかに、ソトニコワの演技は情熱的で会場を引き込む力はあったが、指の先まで神経が行き届いたものではなかった。要するに雑だったというのである。彼女に比べ、キム・ヨナやコストナーは一日の長があった。ただし、キム・ヨナはヴァンクーヴァーのときより落ちていた。コストナーは自身、最高の演技だったことは疑いない。これが衆目の一致するところだろう。
 これに対し、「いしたにまさき」という内閣広報室・IT広報アドヴァイザーが全くとんちんかんなことを書いている。「フィギュアのジャッジの世界はこれだけ明解に点数化されている・・・、またそれをちゃんと伝えてくれるオリンピックオフィシャルサイトの出来栄えもすばらしいものがあります。審査基準にマッチし、さらに攻めたプログラムをやりきったソトニコワこそが金メダリストなのです。」ハイハイ、良い子のみなさんは、お行儀よくしましょうね。文句をいっちゃだめですよ。・・・これこそ下手なスピンの典型だ。冬季ではないが、2020年東京五輪対策がもう始まっている。さすがは税金でネット世論を誘導しようとするITアドヴァイザーならでは。
 問題は、恣意的な点数づけを監視する仕組みが必要だということ。スキー・ジャンプの飛型点やモーグルなどは、審査員別にスコアが公けにされている。自国の選手に有利な点数をつけたり、反対にライヴァル国の選手に不当に低い点数をつけたりしても、上下の点数をカットして平均化するようになっている。ところが、フィギュア・スケートではこの明細が公表されない。形だけのトランスパレンシー(透明度)で終わっているから「しこり」が残ってしまうのである。
 森喜朗元首相の発言も、全文を読んでみると、報道されていることと真意の間には相当のギャップがあることがわかる。
「団体戦負けるとわかってる、団体戦に何も浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。その、転んだということが心にやっぱ残ってますから、今度自分の本番のきのうの夜はですね、昨日というか今朝の明け方は、なんとしても転んじゃいかんという気持ちが強く出てたんだと思いますね。いい回転をされてましたけど、ちょっと勢いが強すぎたでしょうかね。ちょっと転んで手をついてしました。だからそういうふうにちょっと運が悪かったなと思って見ております。」これのどこが、まずいのだろうか。3Aはほかの誰も挑戦しないほど女子では難易度が高い。だから、失敗する確率は高い。だからこそ、団体戦へは参加させず、個人一本に集中させた方がよかったのでは?という感想を述べているだけだ。大方の国民は同じ気持ちだっただろう。真意が読み取れない人は、日本のマスコミの記者として十分な資質がある。読売、産経、日経、毎日、朝日が喜んで採用してくれるだろう。
 さて、最後に、浅田真央の過去のエキシビションのマスターピーシズを掲げておこう。(日本人の実況は邪魔なだけではないだろうか。)

素敵な演技の数々、ありがとう、Mao Asada! よりよい人生が待っていることを願っています。

Mao Asada 2008 Four Continents Championships EX So Deep Is The Nightencore
http://www.youtube.com/watch?v=-ZJUgH6Mjv8
 
Mao Asada Gala TEB 2009
http://www.youtube.com/watch?v=tWqXUmx8Rxg
 
Mao Asada - Closing Gala - 2009 World Figure Skating Championships
http://www.youtube.com/watch?v=9921LChDlBc

<追加>伝説となる「ソチ五輪フリープログラム動画」
http://www.nicozon.net/watch/sm22936534
(トリプル・ルッツの踏足のエッジがインサイドになっている点とトリプル・ループがアンダーローテションになっている点だけがマイナス・ポイントだろう。)


 

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  • 2019.08.20 Tuesday
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